YARN 設立趣意書


1) 部会名

若手研究者ネットワーク部会(Young Academics Research Network:YARN)
(※yarn=英語で「雑談」、「織り糸」の意)
2) 設立趣旨

★地域や学問領域を越えた、マンガ学会内外の若手研究者のネットワークづくり
~マンガ研究者の“トキワ荘”的なコミュニティをオンライン上に構築する~
日本マンガ学会が誕生して7年が経ち、学会誌『マンガ研究』やマンガに関する書籍が多数出版されるようになった。この過程において多くのマンガ評論家が 輩出された。また、日本マンガ学会の年次大会においては大学院生を含めた若い世代も積極的に発表をおこなっており、若い世代のマンガ研究者の成長を垣間見 ることができる。日本マンガ学会にはそれぞれの学問領域をバックグラウンドに持ちつつ、古典的な手法ではないマンガ研究の方法論を模索している若手研究者 の会員も少なくない。しかし、若手研究者同士のネットワークは十分に形成されているとは言い難い。日本マンガ学会の目的は「マンガ研究の推進および会員相 互の交流」であり、設立趣意に 「アカデミズムの新しいありようを模索するものでもあるこの試み」という文面があることを鑑みると、様々な学問領域から集 まった若手研究者のネットワークづくりは、日本マンガ学会にとって重要かつ急務であると考える。なぜならば、学問領域を超えた若手研究者のネットワーク構 築は「人の交流、情報の交換」の場を提供し、多角的な相互研鑽によって支えられた学際的なマンガ研究の展開を支援することに他ならないからである。また、 若手研究者同士のつながりは今後の日本マンガ学会を担う人材育成、マンガ研究者の新たな世代の創設という観点からもメリットがある。次世代を担う若手研究 者が集まって学問領域横断的な交流を行う場所・ネットワークの拠点形成は、既存の学問領域においてマンガやマンガ読者が研究対象とされることを啓発すると いう意味でマンガ研究の幅を広げることが期待できる。また同時に、若手研究者の多角的・重層的な相互研鑽によってマンガ研究の質を高めたり、マンガ研究の 新たな地平を拓いたりすることが期待できる。
そこで、学問領域や居住区域を越えた若手会員同士の研究交流を目的として、若手研究者ネットワーク部会(Young Academics Research Network:YARN*) の設立を 提案する。最初の段階としては、主要構成員は基本的に学問的背景を有する若手研究者(マンガ学会の会員)とし、まずは学会内の若手研究者会員の ネットワークづくりを目指す。学会内の若手研究者会員の連携・相互研鑽は、将来のマンガ学会を担う人材育成につながると同時に、マンガに関する学術研究の 振興にもつながる。また、個人ではアクセスしにくい学術専門領域のジャーナル・データベースを利用できる(大学に所属する)研究者が部会メンバーであるた め、心理学、社会学、教育学、歴史学、死生学といった様々な学問領域におけるマンガに関する研究知見を集約・共有・データベース化することも可能になるだ ろう。次の段階として、学会員に限定せず、学会外からもマンガに関する研究に従事している若手研究者をネットワークに取り込んでいく。これらの過程におい て学問領域横断的な若手研究者集団が育成されることにより、マンガ研究全体の活性化や質向上が実現されていくと期待できる。同時に、現段階で日本マンガ学 会に所属していない若手研究者が日本マンガ学会の会員になることも期待できるため、会員層の拡充にも貢献できると考える。
3) 責任者名

家島明彦(島根大学)・雑賀忠宏(神戸大学)
4) 実施内容・計画

a. オンライン上での若手研究者会員同士の交流および情報交換
部会メンバーは全国各地に散らばっている若手教員または大学院生であるため、雑務に忙しかったり経済的に苦しかったりで全員の日程調整が難しいことが予 想される。ゆえに、部会ミーティングはFTF(対面)方式ではなく、ICT(情報コミュニケーション技術)を駆使したCMC(コンピュータを媒介するコ ミュニケーション)方式でおこなう予定である。具体的には、部会専用メーリングリストを作り、主としてML上で議論を行う。また、Skype等を利用して 音声・映像を取り入れたオンライン会議も適宜導入する予定である。このような現代型ミーティングを基本としつつ、必要に応じて対面ミーティングを行ってい く。
b. 各学問領域におけるマンガに関する研究知見の集約・共有・発信
具体的には、各自がそれぞれの専門領域におけるジャーナル・データベースを活用し、それぞれの学問領域におけるマンガに関する研究知見を収集し、結果を まとめ、オンライン上で共有する。また、部会のウェブサイトを作成・運営し、それぞれの学問領域におけるマンガ研究の文献リストを共有・データベース化し て公開するなど、知見や情報を社会的に認知させつつ、研究において引用されているマンガ研究の洗い出しを行う。その上で、各自の研究を発表し合い、学際的 に吟味・検討することでそれぞれの研究の質向上を図るとともに、学際的なマンガ研究の土壌を整備する。
c. ネットワークの拡充
基本的には「若手」、「研究者」、「会員」というのが部会メンバーとなる条件であるが、これは「中堅以上」、「非研究者」、「非会員」を排除することが 目的ではないし、本部会は閉鎖的なネットワークでもない。むしろ、オープンな(開かれた)ネットワークである。常に新しい風を入れることで、メンバーが固 定されてマンネリ化したり停滞したりすることを予防する。日本マンガ学会の非会員であってもマンガに興味・関心がある将来有望な若手研究者であれば勧誘 し、部会メンバーとして活動に参加してもらうことでネットワークの拡充に努める。また、中堅以上の研究者を「顧問」や「監督」の役としてメンバーに適宜加 えていく。しかし、「縦の関係」よりも「横の関係」構築に主眼を置いた部会であるため、若手の育成に理解を示して貢献してくれる者に限られる。さらに、非 研究者の視点から研究を見つめなおすことも重要であるため、学術領域を持たない者の参加も歓迎する。

a~cの活動を三本柱に据え、適宜新たなアイディアや試みを取捨選択しながら活動を展開していくつもりである。

* yarnとは英語で「雑談」、「織り糸」といった意味である。時には雑談も含めた緩やかなネットワークの中、様々な学問領域の若手研究者の相互的なやり取りによってアイディア・知識が織り合わされて学際的・次世代的なマンガ研究が創発されていくような部会にしたい。
5) 同意者署名一覧

家島明彦(島根大学)、心理学・教育学
雑賀忠宏(神戸大学)、社会学(産業論)
増田のぞみ(花園大学)、社会学(メディア文化論)
池上賢(立教大学)、社会学(メディア論)
山崎浩司(東京大学)、死生学・社会学(医療)
金澤宏明(明治大学)、歴史学(西洋史)
吉村和真(京都精華大学)、思想史・マンガ研究