オンライン書店による研究書販売停止に対する声明
2025年3月14日(Kindle版[紙版は18日])以来、西原麻里『BLマンガの表現史--少年愛からボーイズラブジャンルへ』(青弓社、2025年)が、紙版・電子版ともにアマゾン(amazon.co.jp)からは販売されない事態が続いています。日本マンガ学会もこれまで、学会誌『マンガ研究』などでの会員の研究成果発表に際して、当該プラットフォームを頒布のために利用してきました。そのため、われわれ理事会は、今回の事態を学問の萎縮を招きかねない、憂慮すべきものであるととらえています。
日本マンガ学会は、「マンガとアカデミズムを縁遠いものにしてきた価値観や認識の枠組みそのものを、根本的に問い直す営み」を希求する人々によって、2001年に設立されました。本学会の設立趣意書では、次の通り決意表明をおこなっています。
私たちにとってマンガとは、かつて、何であったのか、いま、何であるのか、そしてこれから、何でありうるのか。こうした問いを、自分のものとして持つ人が、互いの考えを知り、自らの考えをより豊かなものとしていく場を作ること。マンガとそれにまつわる事柄に、何らかの関わりを持つ多くの方々のご参加をいただき、アカデミズムの新しいありようを模索するものでもあるこの試みに、取り組んでいきたいと考えます。
(「日本マンガ学会設立趣意書」)
このミッションを鑑み、われわれ日本マンガ学会理事会は、研究対象や引用する図版などによって研究成果の流通の場が制限されてしまう可能性に、強い懸念と憂慮を表明します。また、会員の皆様におかれましては、プラットフォーム企業などによる個別の判断によって萎縮することなく、自由な研究活動に引き続き邁進していただけますよう、お願い申し上げます。
2025年7月4日
日本マンガ学会理事会