カトゥーン部会2023年度第3回研究会


カトゥーン部会2023年度第3回研究会

日時:2023年7月23日(日)15:00~17:00
場所:zoomによる会議会議形式
報告者:茂木謙之介さん」(東北大学)
論題「天皇マンガの可能性-弱者性・スピリチュアリティとジェンダー- 」

研究会概要

 2010年代以降、天皇や皇族をキャラクターとして登場させるポップカルチャーは増加している。一方で同時期の皇室が言説戦略として弱者性(皇室の維持に自ら積極的には関与できない)と宗教的な超越性(世俗を超えた存在としての役割)を駆使してその存在を知らしめている。天皇マンガにおいてもその動向との関連を確認することができる。天皇マンガは、時に皇室からの言説を強化する場合がある一方で、時にそれに亀裂を入れる批評性が生じる場合もあり、それらは様々なかたちで我々の社会における皇室観の一端を形成することもあると考えられる。以上の指摘をそれらの事例を提示することで論じた。加えて、天皇マンガやポップカルチャーにおける皇族のジェンダー表象に注目し、天皇マンガが浮上させてしまう偽史的物語の可能性を考えるとともに、消費対象としての女性皇族(皇族女子)の顕在化が世継ぎをめとる男性皇族の抑圧感を見えなくさせることにもつながることを示した。

 質疑では、皇室への表現規制が全盛期と今世紀とでは変化してきていることについて、インターネットメディアが従来のマスメディアと相俟って「開放と閉塞」を同時に進行させている(ある面では規制され、ある面では開放される)ことが議論となった。また、天皇家をめぐる人物の表象の扱いから、ネットメディアによる「開放」と雑誌系メディアに代表される「欲望の乗り物」には連続性があることが示唆された。

カテゴリー: カトゥーン部会