カトゥーン部会2018年度第1回研究会


カトゥーン部会の皆様
2018年度第1回部会研究会を以下のように行います。
宜しくご参集ください。
なお,第2回部会研究会は12月8日(土) 13:00~18:00
立教大学12号館3階社会調査室にて開催予定です。
茨木正治(部会責任者)

  1. 日時
    12月1日(土)13:00~18:00
  2. 場所京都造形芸術大学興心館K41教室
    606-8721 京都市左京区北白川瓜生山2-116
  3. 報告者1孫旻喬さん(名古屋大学大学院)
    論題:「手塚治虫ストーリーマンガにおける人造人間の身体像」
    概要:手塚治虫のストーリーマンガ作品には、人間の形をして、人間並みの知能を有する人工物、つまり人造人間=ロボットが多く登場している。井上春樹は日本では「昭和時代に入ってから昭和6年(1931)を頂点にしたロボット・ブームがたしかにあった」のだと指摘しているが、「ロボット・ブーム」=「人造人間ブーム」に見られる人造人間像は手塚の人造人間の創作に影響を与えていると考えられる。これまでの先行研究は主にマンガ表現論の視点から手塚の人造人間に注目しているが、本発表は「人造人間ブーム」に登場した人造人間の全体像を整理し、それと手塚の戦時中の習作『幽霊男』(1945)を比較する。両者の比較を通して、従来の人造人間像が手塚に与える影響を検討し、手塚の人造人間像の特徴を明らかにする。また、手塚の経歴と思想からこのような独特な性格を持つ人造人間が描かれた要因を分析する。
    報告者2エルナンデス・アルバロ・エルナンデス・ダビドさん(国際日本文化研究センター)
    論題:メキシコ漫画「イストリエタ」の紹介―その歴史の概要と社会的背景
    概要:1980年代に、メキシコの独自漫画「イストリエタ」が衰退する前、米国の研究者は、メキシコのように漫画が大衆に浸透している国は他に、日本ぐらいしかないと語った(Hinds & Tatum, 1992)。「イストリエタ」はメキシコ革命の産物であり、公教育省の文化政策の影響を受け、メキシコ社会の変動の中で新たな市場と大衆文化を創造したのである。本報告ではイストリエタの歴史とその社会的背景を紹介し、メキシコの独自漫画「イストリエタ」の特徴について述べる。

2018年度第1回研究会報告

日時:12月1日(土):13:00~18:00
場所:京都造形芸術大学興心館K41教室
   606-8721 京都市左京区北白川瓜生山2-116
報告者1 孫旻喬さん(名古屋大学大学院)
論題:「手塚治虫ストーリーマンガにおける人造人間の身体像」
 人間の形をして,人間並みの知能を持つ人工物である「人造人間」=ロボットが日のメディ表象においてどのように描かれてきたかを辿り,その中で手塚治虫のマンガ作品に見られる「人造人間」キャラクターの特徴を指摘することが本報告の主眼であった。本報告では,戦前戦後の「人造人間」像は,「冷たい「人造人間」」と「暖かい「人造人間」」像に大別できるが,手塚のそれは「他者」としてではなく「私」を表象したものであることを明らかにした。参加者からは,映画等の他メディアからの影響や手塚に関しては,同時代の他のマンガ家からの影響,および後世の他のメディアないしマンガ家への影響などといった諸アクターとの関係についての議論があった。

報告者2 エルナンデス・アルバロ・エルナンデス・ダビドさん
(国際日本文化研究センター)
論題:メキシコ漫画「イストリエタ」の紹介―その歴史の概要と社会的背景
米国の研究者が,メキシコのように漫画が大衆に浸透している国は他に、日本ぐらいしかないと語った(Hinds & Tatum, 1992)ほど隆盛を極めたメキシコの漫画が1980年には衰退していった経緯を本報告では語った。そこでは,「イストリエタ」はメキシコ革命の産物であり、公教育省の文化政策の影響を受け、メキシコ社会の変動の中で新たな市場と大衆文化を創造したことが示された。参加者からは,映画とのかかわり,読者と作品の読書環境,ジェンダーの視点,衰退の原因などについての質問と議論があった。政治・社会を対象としたメキシコ漫画が文化足り得たことが,政治状況,マンガの内容・表現形式,掲載媒体(新聞等),制作過程,および産業構造と過程,読者の情報環境とリテラシーといった多様な側面から捉えられている報告であった。

(文責 茨木正治)

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