カトゥーン部会2005年度第3回研究会


1日時:2005年7月30日(土)14:00~1700
2場所:神奈川近代文学館小会議室
3報告者:重吉知美氏(立教大学大学院)
4報告題目:
社会学的マンガ研究の「問い」
5報告概要
本報告の趣旨・目的として次のような概要が示された。(以下は報告者による概要)
社会学者が研究のトピックとして「マンガ」を取り入れる傾向は,1980年代以降に顕著になる.本報告では,安川一(1987),片桐新自(1990), 宮台・石原・大塚 (1993),中河伸俊(1999)をレビューし,彼らがどのような「問い」を立て,「マンガ」を研究のトピック とすることでどのような回答を導き出したのかを読み解き,紹介した.
安川が問うたのは,リアリティを感じる感覚とメディア空間との関係であり,「極私的空間形成に表出される社会性と日常性」の説明であった.
片桐は,マンガ史を通して,「大衆文化とは何か」,「大衆の潜在的欲望と は何か」について問いを立て,回答を出している.
宮台らは,社会的コミュニケーション全域の大掛かりな変容を描き出し,時間的な展開の中で,私たちの現在の居場所を明確につかみ取ることを目的とした. よって,彼らがマンガを対象にするときの問いは,常に「マンガの時代的状況は現在にどう繋がっているのか」という ところにあった.
中河は,社会問題の方法論的アプローチの妥当性を再検討するという目的があった.そのときの問いは,「問題」が「ある」とはどういうことか,ということで あった. このような根源的問いは,当該対象ひいてはマンガそのものへのまなざしに繋がるのではないだろうか.
「何のためのマンガ研究か」を考えるとき,その答えはそれぞれの立場によって変わってくるだろう.社会学の学徒がマンガを研究対象に選ぶとき,おそらくマ ンガそのものへの貢献は 出来ないであろうが,社会学理論と諸問題解決に貢献が出来るであろう.
以下の報告を受けて、マンガの概念、歴史、編集者のもつマンガへの関わり、「有害」問題における構築主義的アプローチにおける問題などについて意見が交換された。

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