カトゥーン部会2005年度第1回研究会


1日時:2005年4月23日(土)14:00~17:50
2場所:関西大学尚文館4階408号室
3報告者:藤本純子氏(大阪大学大学院)
4報告題目:

『女学生の友』(1950.4000~1966.12)掲載短編小説にみる主軸的人間関係の推移 ――佐伯千秋の作品分析を中心にーー

5報告概要
本報告の趣旨・目的として次のような概要が示された。

「少女小説」と少女マンガは、表現形式は違いながらも、その歴史の中で深い関わりを持って存在してきたといえる。そのつながりを考えるにあたり、「少女小 説」が恋愛と結びつき進化かつ深化していく過程の分析の一つの切り口として、戦後刊行された少女雑誌掲載の「少女小説」の変遷を、”異性への関心(想 い)”をキーワードに探した。分析対象として、『女学生の友』(小学館)創刊号(1950,4)~1966,12月号中に掲載された、読み切り小説、約 1000点を扱いその物語行為を明らかにすることで、言説としての「少女小説」のあり方を探ることを試みた。

次に、『女学生の友』短編小説のテーマ別分類の時系列的変化についての知見が示された。それによれば、1956年を境に、テーマの主軸が「家族や同姓の友 人との関係」から、「異性間に生じる特別な感情」に移っていったことが明らかになった。こうした傾向を、佐伯千秋の短編小説の詳細な分析とともにその作品 群に見られる変化を追うことによって、より明確になるとした。少女の「純粋さ」を教導的立場から語った差益の物語行為であっても、「他者」の存在を否定で きず、社会性の獲得への動きとそれを既存の枠内にとどめようとする動きとの「せめぎあい」がみられる(文責者の理解)のであろう。

以上のような内容の報告について、少女小説から少女マンガへの影響と関連し60年代の「異性間に生じる特別な感情」の増加の意味づけ、当該雑誌のマンガお よび挿絵についての特徴、読者への「きめの細かな」対応のもつ意味、「他者」の登場といわゆる「ジュニア小説」との連関について等々さまざまな意見・感想 がなされた。

なお、次回研究会(第2回)は、5月21(土)関西大学にて14時より 秦美香子氏(神戸大学大学院)を報告者として開かれることを確認し(詳細は、後日学会HPにて)散会した。(文責 茨木正治)

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