カトゥーン部会2004年度第6回研究会


  1. 日時
    2005年3月12日(土)14:00~17:00
  2. 場所
    神奈川近代文学館中会議室(横浜市中区山手町)
  3. 報告者
    押山美知子氏(専修大学大学院)
  4. 報告題目
    六〇年代少女マンガのジェンダー表象――男装のヒロインを手掛かりに
  5. 研究会概要
    戦前の少女文化の枠組みが、戦後のマンガにどのように受容されているかを<男装の少女>という表象を手がかりに考察することが報告の主眼であった。具体的 には、『リボンの騎士』の分析によって明らかになった上記の指摘が、『ベルサイユのばら』に至るまでの間の時期(1960年代)のマンガ作品の中にどう いった形で表れているかを今回の報告では示された。この時代、<男装の少女>ものは、先行研究では空白期間とされていた。それを裏付けるものとして、当時 の主要な描き手である男性作家の言説をあげ、その背景としての「悪書追放運動」および戦前・戦後の情報統制の「トラウマ」(*文責者の理解)による、出版 社・作家の対応、などをあげた。そこから、ヒロイン像の保守化・画一化の動きが進み、ジェンダーカテゴリーの相対化を生み出す可能性を持つ<男装の少女> というヒロイン設定や、<性別越境>というモチーフが避けられたことを指摘した。さらに、当時、希少ながらも存在した<男装の少女>ものの分析を通じて報 告者は、1、60年代の少女マンガにおける保守化・画一化の線を逸脱するものではなかった作品と、2『ベルサイユのばら』に連続する作品(水野英子の『銀 の花びら』)、とを見い出す。1の作品群は、<性別越境>への否定的な把握、ジェンダー秩序の回復を最終目的とするものであり、他方2は、<男装の少女> の<内面>に既存のジェンダー秩序を超えるものが表れており、それは眼の表現に伺われると述べた。
    当時の読者層の状況とくに雑誌別の違いに伴う意識の違い、少女マンガ雑誌の発行形態の変化と作品との関係、ジェンダー表象を読み取るときのコンテクスト理解の範囲など、様々な視点からの発言がなされた。

(文責 茨木正治)

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