カトゥーン部会2004年度第5回研究会


  1. 日時
    2005年2月11日(金)14:00-17:00
  2. 場所
    神奈川近代文学館中会議室
  3. 報告者および報告題目
    第一報告:岡部拓哉氏(新聞漫画研究所)
    「地方紙における連載マンガの歴史と傾向」
    第二報告:増田のぞみ氏(関西大学大学院)
    「『大阪パック』の誌面変遷と「漫画雑誌」の近代」
  4. 研究会報告内容
    (1)第一報告
    従来ほとんど顧みられることのなかった地方紙や機関紙の連載漫画に光を当てて、その歴史と傾向を、全国紙との比較をしながら、時代背景を考慮しつつ報告が なされた。今回の報告では戦後の地方紙が、1940年体制の残滓(1県1紙体制)をいかに乗り越えていくかを主眼に1946年から2005年までの連載漫 画の傾向を概観した。報告者は、以下のように新聞漫画の歴史を概観した。戦後の地方紙の連載漫画は、1945年から55年ごろに核家族を表彰した漫画が登 場し、50年代講は専属漫画家が現れ、50年代中盤から60年代にかけては子供や女性が主役の漫画が顕著になる。60年代後半から画風や様式の多様化がさ れる(劇画の連載や、ナンセンス、会社漫画、社会風刺など)。2000年が、新聞漫画の転換期であり、「大家族」への回帰、地域性の重視などがみられる。 上記は司会者のまとめであり、実際には、作品の内容の変遷(内容研究)だけでなく読者・漫画家・新聞社の関係や、漫画家のリクルート、新聞社、通信社との 関係(の変化)(送り手研究)といった包括的なテーマが数多く指摘され、かつ自由な討論がなされ極めて示唆に富む報告であった。
    (2)第二報告
    明治39年から昭和39年まで存続した「雑誌漫画」である『大阪パック』は、昭和21年から『読物と漫画』に改題されたが、この時期における「画」の呼 称、画と文章との関係、それぞれ関わる「画家」と「漫画家」の変遷を語り、近代以降の「漫画」をとりまく状況の変化についての考察がなされた。大正時代に 「職業漫画家」が登場した指摘を受けて討論がなされ、メディアとしての「漫画」と作品としての「漫画」の相違が、作品への無記名に繋がるというコメント や、職業漫画家と「芸術家」との相違が、作家によって表現の知が画見られる場合もあるという声もあった。また、「漫画」というコトバについては、大正5年 に岡本一平による「東京漫画会」の創設は、まだ「漫画」というコトバの定着が一般に浸透していないことの例証であるという指摘も参加者からなされた。ここ から、「漫画漫文」(岡本一平)に象徴される大正期の漫画と文章との関係についての討論へ進んだが、時間の関係上、このテーマだけでなく、その他の報告の 論点についても割愛せざるを得なかった。
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