マンガ研究 vol.7


2005年4月20日発行
表紙 長谷邦夫
研究論文

中澤潤
マンガのコマの読みリテラシーの発達
前田雅司
日本のサブ・カルチャーと物語性

論説

砂澤雄一
マンガにおける「読者」と「語り」の問題について―『マンガ産業論』と『マンガ学への挑戦』を読んで―
茶谷薫
二十世紀の正負の遺産―名作「地獄でメスがひかる」と言語規制という悪弊―
百瀬響
文明開化期における違式■違条例の図解による普及啓発について

特集 戦争をテーマにした漫画・マンガ資料

清水勲
近代の戦争と漫画資料
戦争漫画を紹介した戦後カートゥーン資料
内記稔夫
戦後の戦争マンガ(ストーリーマンガ)について―赤本マンガからコミックまで―
戦後の戦争マンガリスト(不完全)について

中澤潤
マンガのコマの読みリテラシーの発達

<要旨>マンガの読みのリテラシー技能の一つであるコマの読みとりのリテラシーの発達的な変化を、人物絵、表情、形喩、吹き出し表現、音喩、コマの感情表現という側面から取り上げ、幼児、小学1、4、6、中学2年生を対象に検討した。コマの読みとりのリテラシーは、発達につれ上昇した。クラスター分析によると、コマの読みとりのリテラシーは、相対的に容易なもの、徐々に獲得されていくもの、難しいものに分かれた。容易なものは、ステレオタイプ的で記号的な人物表現、喜びや怒りなどの基礎的な表情、物理的な動きを反映した形喩等であった。難しいものは、高度に抽象的な形喩や音喩などによる心理的表現であった。
<キーワード>マンガ マンガリテラシー コマの理解 発達
前田雅司
日本のサブ・カルチャーと物語性

<要旨>日本のサブ・カルチャーの一翼を担う漫画やアニメ等が、現在世界的に注目され、日本文化を発信していく上で重要な文化的コンテンツとして捉え直しが図られ つつある。だが、そうした日本の漫画やアニメ等が当初から単純に受け入れられてきたのではなく、送り手と受け手とが共犯的な関係に基づきながら形成されて きたことを見逃す訳にはいかない。
そうした漫画やアニメが取り入れられてきた表現手法は、性や暴力表現を複雑に絡ませながら、近代が培ってきた言説性=構造性を相対化することによって、自 らの物語性を重層化させ、多義的な意味を可能ならしめることであったといえよう。それが、今日、オタク化の流れの中で、単なる表層的な記号表現として消費 されるようになり、形骸化してきているところに、サブ・カルチャーを巡る物語性の危機的状況が現れてきているといえよう。本論では、こうした認識の下に、 日本のサブ・カルチャーにおける物語性の変容とその空洞化を順を追って捉えることを目的とする。

カテゴリー: 『マンガ研究』